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2019/04/22

[ インタビュー ]〝色と言葉の持つチカラで表現した、ココロを灯すろうそくを〟 ろうそく作家、ろうそく・雑貨ギャラリー「i r o あかり」オーナー 関口文子さん〈前編〉

 

 

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午後のやわらかな陽が差し込む作業台の上に並んでいるのは、一編の詩が添えられたパームワックスや大豆ワックスを使用した色彩豊かなろうそくたち。

ろうそく作家であり、福岡・直方ろうそく・雑貨ギャラリー「 i r o あかり」のオーナーでもある関口文子さんのご自宅の一角に設けられたアトリエスペースで、ものづくりとの出合いについてや、日々に生かすろうそくの魅力をじっくりと伺いました。前編の今回は「きっかけ」「色」「言葉」の3つをキーワードにインタビュー。

 

 

 

 

 

■きっかけ 「キャンドル作家のろうそくづくりの番組を見て」

 

 

 

 

 

ーろうそくづくりのきっかけを教えていただけますか。

 

 「もともとインテリアとしてのろうそくを趣味で集めていました。会社員をしていた頃です。そんなある日、テレビでキャンドル作家さんのろうそくづくりの番組を目にしたのがきっかけです。それを見たときに『自分でも作れるんだ』と思い、翌日にホームセンターで材料を早速手に入れました」

 

ー次の日にですか?

 

「もう作りたくてたまらなくって。(笑)手に入れた仏壇用のろうそくをポキポキと折って、お鍋で溶かし、紙コップに流し込んで作ってました。手作りのおもしろさに目覚めて、仕事から帰って、寝るまでの2時間くらい毎日作ってました。(笑)」

 

 

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素材となるパームワックス(ヤシの葉を精製した植物性のワックス)を火にかけるところ。

この他にも大豆油を精製した大豆ワックスなど、iroあかりのろうそくは天然素材が用いられている。

 

 

 

 

ー毎日…。それはたくさんの作品が生まれそうですね。

 

「そうそう、どんどん溜まっちゃう。(笑)当時は自分で灯したり、友だちに『非常時に使えるから良いよ』と渡していました。(笑)その後から、デザインや作り方をさらに模索するようになって、だんだんと変化していきました」

 

ー研究熱心なシーンが目に浮かんできました。色々模索されて、趣味から作品としてろうそくへと変わっていく中で「誰かに広めたい」とか「見せたい」という気持ちは生まれてきましたか。

 

「そうですね。〝広めたい〟というより〝この作品を人はどう感じるのかな〟という好奇心が生まれてきました。初めて北九州で開催されたフリーマーケットに出店したのはそのタイミングでした」

 

ー人目に触れる初の機会ですね。最初のお客さんのこととか、とても気になるのですが。

 

「初めてのお客さんは子どもたちでした」

 

ーへえ…!

 

「会場は芝生の広がる大きな公園で、ちょうど遠足で来ていた子たちが『わあ、何これ!』って言いながら私のブースに集まってきたんです。沢山の色がズラリと並んでいたから、興味をもってくれたようでした。その時はクッキー型で抜いたプレート状のろうそくを、1枚30円くらいで売りました。真ん中に芯を通す穴だけ開けて、自分の好きな配色で積み重ねて作るスタイルです」

 

ーセルフスタイル…、それは子どもたちも嬉しいでしょうね。

 

「小学校低学年ほどの子どもたちが、思い思いの色を、あーでもないこーでもないと自分の気に入る配色になるまで真剣に選んでいました。きっとお小遣いで手にとってくれたんでしょう。その時、子どもも色が好きなんだなあと気づきました。とてもうれしかったです」

 

ー〝自分の好きな色を使っておもいおもいに作ってもらう〟というスタイルですね。関口さんは今までろうそくづくりのワークショップも各地でされていますが、その時にも参加者に好きな色を選んでもらい、重ねていく方法だったのが印象的でした。それはこうして初期からのものだったんですね。

 

「確かに! そうですね。体験時は、ご自分のそのときの感覚を大切にして自由に色を選んでもらっています」

  

 

 

 

 

 

 

 

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■色について

「ろうそくが作りたいというより、色と関わりたいから、ろうそくを作る感覚」

 

 

  

 

「最近の新作です」(色とりどりのろうそくがたくさん入ったバットを持ってきてくれる)

 

ーiroあかりのろうそくってほんとうに多彩な色が使われていますが、昨年の秋に実際にお店に伺った時も、この鮮やかさが印象的でした。ろうそく作りを始められた当初から色のことは意識されていましたか。

 

 

 

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 福岡・直方にあるお店の様子。お店のパンフレットに

「あなたの色を見つけにきてください」とあるように「iroあかり」の「iro」は十人十色の意味も込められている。

 

 

 

 

「〝どうやったら色と遊べるか〟ということを考えた時、ろうそくが一番表現できるツールだったように思います」

 

ーそれはとても意外です。ろうそくが作りたいという気持ちが最初だったのかと思いました。

 

「よく言われます(笑)ろうそくが作りたいというより、色と関わりたいので、ろうそくを作る感覚です。色鉛筆の箱をパカッと開けると、いろんな色があふれるように並んでいる。とてもワクワクする瞬間です。ろうそくが完成してどんな色が現れるか型から外す時のワクワク感と似ています」

 

 

 

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ろうそくに色付けするための色粉を見せてもらった。 鉱石の標本のように美しい。

 

 

 

ーなんだか目が輝いてらっしゃいます。(笑)

 

「ずっと『色』というものに興味がありました。そういえば、ろうそく作りを始めた頃に色に関わる資格を取りました」

 

ー資格とは?

 

「カラーコーディネーターです。将来のことを考え始めた時、自分にしかできない仕事してみたい。資格を取ってみようと思い立って色々と調べました。その時に出合ったのがカラーコーディネーターでした。〝色にまつわる仕事なら一生続けていける!〟そう思いました。パーソナルカラーアドバイザーという自分に似合う色選びの仕事です」

 

ーそれは初耳でした。同時期にキャンドル作りの番組ですね。

 

「そう。クレヨンを使ってろうそくに色をつけているシーンを見たとき、自分の好きな色でろうそくを作れることに惹かれ、これからは〝自分の好きな色彩で表現できる〟とトキメキました」

 

 

 

 

 

 

 

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 〈溶かしたパームワックスに色粉を落として、色付けをしていく作業の様子。

3原色の青、赤、黄色を次々に落としていくと、色が混じり合う部分に、また新しい色が生まれる。

固まるにつれて底にうっすらとパームワックスならではの結晶模様が表れてくる。(最後の写真)〉 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■言葉について

「目に見えないけれど確かにあるエネルギー」

 

 

 

 

ー初めてiroあかりのろうそくを手にとったとき、自分のその時の心情に近かったり、響くことばが書いてある作品を選んだことを覚えています。「作品に詩がある」というのは、iroあかりのろうそくの個性のひとつだと思います。それは初期からのスタイルだったのでしょうか。

 

 「はい。そうです。ろうそくは火をつけたら燃えて無くなります。カタチが無くなっても、その人のココロに何か残るものとして〝詩〟をつける。初期から〝色と言葉の持つチカラで表現したろうそく〟と紹介しています」

 

ー言葉についてはどのようにお考えでしょうか。

 

 「〝言霊〟とも言われるように、とても大切なものだと感じています。言葉は〝目に見えないけれど確かにあるエネルギー〟だと思うのです。言葉ひとつで傷ついたり、救われたりします。だからこそ、健やかな言葉を作品にのせることで、手にした人達に循環していけばいいと思っています」

 

 

 

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(後編にづづく)

 

 

 

 

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聞き手:Keiko Nagao

2019/04/22 更新